「口腔機能発達不全症」と言われたら?原因・症状・対応を整理
歯科医院でお子さんが「口腔機能発達不全症の可能性があります」と言われ、不安を感じた親御さんも多いのではないでしょうか。あまり聞き慣れない言葉ですが、特別な病気というよりも「お口の使い方が年齢相応に育っていない状態」を指します。放置すると歯並びや噛み合わせ、発音、食べ方などに影響することもありますが、早めに気づき、正しく対応することで改善が期待できるケースも少なくありません。
本コラムでは、口腔機能発達不全症の基本から、症状のサイン、生活への影響、親御さんができることまでをわかりやすく整理します。
口腔機能発達不全症とは?どんな状態を指すのか
口腔機能発達不全症とは、噛む・飲み込む・話す・呼吸するといったお口の機能が、成長段階に対して十分に発達していない状態を指します。原因は一つではなく、食生活や姿勢、呼吸の仕方、癖などが複合的に関係していることが多いのが特徴です。

病気ではなく「発達の遅れ」に近い状態
この状態は感染症や虫歯のような疾患とは異なり、生活習慣や成長環境の影響を強く受けます。そのため、早い段階で気づき、正しい方向に導くことで改善が見込めます。
歯科で管理・サポートする意味
歯科では、歯並びや噛み合わせだけでなく、舌や唇の動き、飲み込み方、呼吸の状態などを総合的に確認し、必要に応じてトレーニングや生活指導を行います。
口腔機能発達不全症で見られやすい症状とサイン

お口まわりに見られるサイン
- 口がぽかんと開いていることが多い
- 唇をしっかり閉じるのが苦手
- 舌が前に出る、歯に当たる癖がある
口腔機能発達不全症では、まずお口の周囲の使い方に変化が現れることが多くあります。たとえば、安静時でも口がぽかんと開いている状態が続いている場合、唇を閉じる力や鼻で呼吸する習慣が十分に身についていない可能性があります。また、唇をしっかり閉じることが苦手なお子さんでは、飲み込みや発音の際に余分な力がかかりやすくなります。さらに、舌が前に出る、歯に押し当てるといった癖が見られる場合、舌の正しい位置や動かし方が身についておらず、歯並びや噛み合わせに影響することもあります。
食事中の様子から気づくこと
- よく噛まずに飲み込む
- 食べこぼしが多い
- 硬いものを嫌がる
食事の様子は、口腔機能の発達状態を知る大切なヒントになります。あまり噛まずにすぐ飲み込んでしまう、丸飲みのような食べ方が目立つ場合、噛む力や噛み方が十分に育っていないことが考えられます。また、食べこぼしが多い場合は、唇や舌をうまく使えていないサインであることも少なくありません。加えて、硬さのある食材を極端に嫌がる場合には、噛むこと自体に疲れやすさや苦手意識を感じている可能性もあります。
日常生活での気づき
- 発音が不明瞭に感じる
- いびきや口呼吸がある
- 姿勢が崩れやすい
日常生活の中でも、口腔機能発達不全症に関連するサインが見られることがあります。たとえば、「言葉が聞き取りにくい」「特定の音が発音しづらそう」と感じる場合、舌や唇の細かな動きがうまく使えていないことが背景にあることがあります。
また、いびきや口呼吸が続いている場合は、呼吸の仕方がお口中心になっており、歯並びや歯茎の健康にも影響を及ぼす可能性があります。さらに、猫背など姿勢が崩れやすいお子さんでは、顎や舌の位置が安定しにくく、お口の機能発達に影響するケースも見られます。
これらのサインが必ずしもすべて当てはまるわけではありませんが、複数見られる場合は注意が必要です。
歯並び・発音・食べ方への影響はある?

歯並びや噛み合わせへの影響
噛む力や舌の動きが十分に育たない状態が続くと、顎の骨が本来の成長をしにくくなり、歯がきれいに並ぶためのスペースが不足しやすくなります。特に、舌は顎を内側から支え、歯列の幅や形に影響する重要な役割を担っています。その舌が正しい位置で使われていないと、歯が内側に倒れ込みやすくなり、結果として歯並びや噛み合わせの乱れにつながることがあります。
こうした影響はすぐに現れるとは限りませんが、成長とともに少しずつ積み重なり、将来的な矯正治療の必要性に関わる場合もあります。
発音への影響
舌や唇の動きが未熟なままだと、言葉を発する際に空気の流れや舌の位置が安定せず、「サ行」「タ行」「ラ行」などの発音が不明瞭に聞こえることがあります。日常会話では大きな問題にならなくても、周囲から聞き返されることが増えると、お子さん自身が話すことに苦手意識を持ってしまうケースもあります。
成長とともに自然に改善する場合もありますが、舌の使い方や口の開き方が癖として定着すると、改善に時間がかかることもあるため、早めに気づくことが大切です。
食べ方・飲み込みへの影響
丸飲みの癖や、片側だけで噛むといった偏った噛み方が続くと、噛む回数が減り、顎や歯茎に十分な刺激が伝わりにくくなります。その結果、顎の発達が不十分になったり、噛み合わせのバランスが崩れたりすることがあります。
また、しっかり噛まずに飲み込む食べ方は、消化器官への負担が増えるだけでなく、「噛む」「飲み込む」といったお口の基本的な動きを育てる機会を減らしてしまいます。正しい食べ方を身につけることは、口腔機能発達不全症への対応として非常に重要なポイントです。
気づいたときに親御さんができることと相談の目安

家庭で意識できるポイント
- よく噛む食事内容を意識する
- 姿勢を整えて食事をする
- 口を閉じて鼻で呼吸する習慣づけ
口腔機能発達不全症への対応は、特別なことを急に始めるよりも、日常生活の中でできることを少しずつ整えることが基本になります。たとえば、食事では「よく噛むこと」を意識しやすい献立を取り入れることが一つの工夫です。噛み応えのある食材を年齢に合わせて取り入れることで、噛む回数が自然に増え、お口や顎の発達を促すきっかけになります。
また、食事中の姿勢も重要です。足が床につき、背中が丸まらない姿勢で座ることで、噛む・飲み込む動きが安定しやすくなります。さらに、普段から口を閉じて鼻で呼吸する習慣を意識することも大切です。口呼吸が続くと、お口まわりの筋肉が十分に使われにくくなるため、日中の様子をさりげなく見守ることがポイントになります。
無理に直そうとしないことも大切
お子さんの癖に気づくと、「早く直さなければ」と焦ってしまうこともありますが、強く注意したり、無理にやめさせようとしたりすることが必ずしも良い結果につながるとは限りません。かえって緊張やストレスとなり、別の癖として現れてしまうこともあります。
大切なのは、癖そのものを責めるのではなく、「なぜその状態になっているのか」に目を向けることです。まずは親御さんが気づき、生活環境や食事、姿勢などを整えることで、自然に改善へ向かうケースも少なくありません。
歯科医院に相談する目安
- 気になるサインが続く
- 歯並びや噛み合わせが心配
- 発音や食べ方で悩みがある
ご家庭で見守っていても、気になるサインが長く続く場合や、少しずつ強くなっていると感じる場合には、歯科医院への相談を検討するとよいでしょう。具体的には、歯並びや噛み合わせの変化が気になる場合、発音がはっきりせず本人が話しづらそうにしている場合、食べ方に偏りがあり心配な場合などが一つの目安になります。
歯科医院では、歯だけでなく、お口全体の使い方や成長の状態を確認したうえで、必要に応じたアドバイスやサポートを行います。早めに相談することで、無理のない対応につなげやすくなります。
まとめ
口腔機能発達不全症は、子どもの成長過程で見られる「お口の機能の発達の遅れ」を指す状態です。放置すると歯並びや噛み合わせ、発音、食べ方に影響することもありますが、早期に気づき、正しく対応することで改善が期待できます。大切なのは、親御さんが一人で抱え込まず、必要に応じて歯科医院と連携しながら見守ることです。お子さんのお口の成長が気になる場合は、ぜひ一度専門家にご相談ください。