八重歯はかわいいと言われるのに矯正しないとダメですか?
八重歯は、一般の方と歯科医師とで認識が大きく異なる歯並びです。タイトルにある通り「八重歯はかわいい」と言われることがあり、肯定的に捉えられるケースも少なくないのですが、歯科医師からするとたくさんのデメリットを伴った歯並びにしか見えないのです。今回はそんな八重歯の特徴や矯正治療の要否、具体的な八重歯の治し方について、吉祥寺のハート・イン歯科クリニックが解説します。
八重歯とは?犬歯との違い
八重歯とは、上の前から3番目の歯が外側に大きく逸脱した歯並びです。いわゆる“乱ぐい歯”の一種で、紛れもない歯列不正であることを強調しておきます。そのため歯科医師が診察をしたら「叢生(そうせい)」という診断名がつきます。さらに厳密に表現すると、八重歯は「上顎犬歯の低位唇側転位(ていいしんそくてんい)」となります。
犬歯との違いは?
犬歯は、前から3番目の歯を指します。そして犬歯が外側に出ている歯並びを八重歯と呼んでいます。八重歯はあくまで俗称であり、正式な診断名ではないことから、出っ歯や受け口、乱ぐい歯と同じように捉えると良いでしょう。当然ですが犬歯の中には正常に生えているものも少なくないため、犬歯=八重歯ということにはなりません。
八重歯はかわいいと言われるのに矯正しないとダメですか?
八重歯は確かにかわいいという印象を与えることがあります。ひと昔前までは、かわいいアイドルの象徴のような歯並びとなっていたため、その価値観が今でもある程度は残っていますが、かなり薄れてきているのも事実です。“付け八重歯”という製品が一部で流通しているものの、八重歯が悪い歯並びの一種であることは、徐々に認知されてきているといえるでしょう。繰り返しになりますが、八重歯は紛れもない歯列不正であり、矯正治療を必要とする歯並びですので、見た目がかわいいからと言って放置することはおすすめできません。
八重歯を放置するとどうなる?
八重歯は、乱ぐい歯でもあるため、矯正治療をせずに放置すると次のようなリスクが生じます。
【リスク1】虫歯や歯周病になる
八重歯の方は実感しているかと思いますが、きれいに生えている歯と比較して清掃性が極めて低いです。普通の歯ブラシを使って漫然と磨いていたのでは、必ず磨き残しが生じます。八重歯の状態によっては、ワンタフトブラシやデンタルフロスなどを使い分けて、丁寧に清掃しなければ、たくさんの汚れが残って細菌の温床となります。その結果、口臭が強くなり、虫歯・歯周病の発症リスクも高くなるのです。八重歯の方にはまずこのリスクについて正しく理解しておいていただきたいです。
【リスク2】効率良く咀嚼できない
八重歯は、その生え方からもわかる通り、咀嚼運動には参加しません。極端な言い方をすると、ただ横に生えているだけの歯なので、本来、犬歯が担うべき役割をその他の歯が負担することになります。犬歯というのは歯根が一番長い歯で、咀嚼運動でも重要な役割を果たすことから、そのうちの1本、あるいは2本が戦力外通告を受けることは歯列全体にも大変な悪影響をもたらします。短期的には食べ物を噛みにくくなるだけですが、長期的には他の歯の寿命が短くなったり、全体の歯並び・噛み合わせをさらに悪くしたりすることもあるため、十分な注意が必要です。
【リスク3】口元のコンプレックスに変わるかもしれない
八重歯をかわいいと感じるのは、日本特有の価値観と言っても間違いではありません。少なくとも欧米で八重歯を口元のチャームポイントする文化はないでしょう。また、日本人の中でも八重歯に対する考え方は時代とともに変化しているため、今はかわいいと思えたとしても、5年後、10年後には口元のコンプレックスになっていても何ら不思議ではないのです。その点も踏まえると、八重歯は早期に矯正しておいた方が良いと言えます。
八重歯の矯正治療について
八重歯の症状は、矯正治療で改善することが可能です。大人になってからの八重歯の矯正法としては、マウスピース矯正とワイヤー矯正の2つが挙げられます。
八重歯のマウスピース矯正
透明な樹脂製のマウスピースを装着して、歯を少しずつ動かしていく治療法です。八重歯の場合は、外側に出ている犬歯を正常な位置へと戻していくことになります。例えば、マウスピース矯正の代名詞ともいえる「インビザライン」では、矯正用のマウスピースを1日20~22時間装着し、1~2週間ごとに交換していくことで、外側に出ている犬歯が正常な位置へと動いていきます。
マウスピース矯正は、一見すると何もつけていないように見えるため、八重歯の矯正を受けていることを周りに気づかれたくない方に向いている治療法といえます。また、マウスピース矯正なら食事と歯磨きの時に装置を取り外せるため、八重歯の矯正を始めても日常生活が大きく変化することがない点もメリットといえるでしょう。
ただし、顎の骨が小さかったり、歯のサイズが大きかったりすることが原因で八重歯になっているケースは、抜歯の必要性が高く、マウスピース矯正には向いていないこともあるため、まずはカウンセリングおよび検査を受けることをおすすめします。
八重歯のワイヤー矯正
1本1本の歯にブラケットをつけて、歯列全体を金属製のワイヤーで動かす治療法です。マウスピース矯正と比較すると、装置が目立ちやすい、歯の移動に伴う痛みが強い、ワイヤーが粘膜を傷つけやすい、食事がしにくい、清掃性が悪い、装置のトラブルが多いなど、デメリットが目立つ矯正法ではありますが、抜歯が必要なケースには向いています。大人になってからの八重歯の矯正治療で、顎の骨を広げることができず、抜歯以外できれいに歯を並べることが難しい場合は、ワイヤー矯正を第一に検討すると良いでしょう。
まとめ
今回は、八重歯の特徴や放置するリスク、矯正治療の必要性などを吉祥寺のハート・イン歯科クリニックが解説しました。八重歯はかわいいと言われる歯並びですが、れっきとした歯列不正であり、専門家からするとデメリットしかないことから、早期に矯正治療を受けた方が良いと言えます。大人になってからの八重歯の治療では、顎の骨を広げることが難しいため、抜歯が必須となる場合も少なくない点にご注意ください。軽度から中等度の八重歯なら、抜歯をせずにマウスピース矯正で快適に治せることが多いです。