歯が浮くように痛い原因と治療法について
ひと言で「歯が痛い」といっても、ケースによって感じ方や痛みの強さが大きく変わります。最もわかりやすいのは進行した虫歯による「ズキズキ」「ジンジン」といった歯痛で、経験したことがある方も多いことでしょう。冷たいものがキーンとしみる知覚過敏の症状もよく見られる歯痛で、虫歯になっていない歯でも起こり得ます。
では、「歯が浮くように痛い」といった感覚はどうでしょう?経験したことのない方にとってはイメージしにくい歯痛ですが、今現在、この症状に悩まされている場合は、その原因と治療法について知りたいことかと思います。そこで今回は、歯が浮くように痛い症状とその原因、治療法について吉祥寺のハート・イン歯科クリニックがわかりやすく解説をします。
歯が浮くという症状について
「歯が浮くように痛い」という症状を考える上では、まず歯とその周りの組織について正確に理解する必要があります。
歯を支える組織
私たちの歯は、歯茎・歯根膜・歯槽骨といった歯周組織に支えられています。歯茎は歯の周りを囲んでいるピンク色の軟組織で、肉眼でも確認できますが、歯根膜は歯の根っこの周りに分布しているため、口腔内は露出していません。さらに深い部分にあるのが歯槽骨で、今回のテーマである「歯が浮くように痛い」症状は主に歯根膜が関係しています。
歯根膜の異常によって歯が浮くような痛みが生じる?
歯根膜は、コラーゲン線維をベースとした軟組織で、神経や血管が分布しています。噛んだ時の圧力を緩和するクッションとしての役割を果たす他、噛む力をコントロールしたり、周りの組織に酸素や栄養素、免疫細胞などを供給したりする機能を備えています。そんな歯根膜に何かしらの原因で異常が生じると、歯が浮くように痛い症状が現れやすいです。
歯が浮くように痛い主な原因
歯が浮くように痛い原因としては、主に歯周病、歯根膜炎、根尖性歯周炎、歯ぎしり・食いしばり、ストレス・疲労などが挙げられます。
【原因1】歯周病
軽度の歯周病では、歯茎の腫れや出血、口臭が強くなるなどの症状が認められますが、重度になると歯周組織に膿が溜まり、歯を圧迫するような力が働きます。それが「歯が浮くように痛い」という症状へとつながるのです。
【原因2】歯根膜炎(しこんまくえん)
歯根膜炎とは、歯根膜に炎症が生じている状態です。外傷や細菌感染によって歯根膜に炎症が生じて腫れると、歯が圧迫を受けて浮いたような症状が現れます。
【原因3】根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
進行した虫歯を放置していると、歯の根の先に細菌や汚染物質などが漏れ出て、膿の塊を作ります。これを専門的には根尖性歯周炎といいます。歯の根の先に炎症および病巣が存在していると、噛んだ時に痛みを感じたり、歯が浮いたような症状が現れたりします。
【原因4】歯ぎしり・食いしばり
成人男性が食事の時に噛む力は、体重と同程度(60~70kg)といわれています。歯ぎしりや食いしばりは、力の加減をコントロールできないばかりか、歯と歯の間に食物が介在しないことから、噛む力が体重の2倍にまで高まります。そんな歯ぎしり・食いしばりが習慣化していると、歯茎や歯根膜にダメージが蓄積し、血行不良や腫れ、歯が浮くように痛いなどの症状が出てきます。
【原因5】ストレス・疲労
強いストレスを受けたり、疲労がたまっていたりすると、自律神経に異常をきたして全身にさまざまな症状が現れます。歯根膜の血行不良による歯が浮くように痛いという感覚もその中のひとつとして挙げられます。
歯が浮くように痛い場合の治療法
歯が浮くように痛い場合の治療法は、原因によって異なります。
歯周病が原因のケース
歯周病が原因で歯が浮くように痛い場合は、歯周病治療を受けましょう。まずは歯周病菌の温床となる歯垢・歯石を徹底的に取り除き、衛生的な口内環境を築きます。それでも改善されない症状は、歯周外科治療などで対応します。
歯根膜炎が原因のケース
歯根膜炎は主に虫歯に由来していることから、虫歯治療で改善することになります。とくに歯の神経まで細菌に侵されているケースでは抜髄や根管治療が必要です。
根尖性歯周炎が原因のケース
根尖性歯周炎の主な原因も重症化した虫歯です。根管内で繁殖した細菌や汚染物質をきれいに取り除くことで、根尖部の病巣も消失します。
歯ぎしり・食いしばりが原因のケース
歯ぎしりや食いしばりが原因で歯が浮くように痛い場合はスプリント療法が有効です。ナイトガードと呼ばれるマウスピース型の治療装置を睡眠中に装着することで、歯ぎしりによるダメージを最小限に抑えられます。ナイトガードには顎を正しい位置へと誘導する効果も期待できるため、治療を続けていくなかで歯ぎしりも徐々に改善されています。
頭痛や肩こりなどへの対処法は?
歯周病や根尖性歯周炎、歯ぎしり・食いしばりなどには、歯が浮くように痛い症状以外にも、頭痛や肩こりを伴うことがあります。これらは不定愁訴とも呼ばれる症状で、歯周病治療や根管治療を行っただけでは完全に改善できないことも珍しくありません。それは噛み合わせや噛み癖、補綴装置の状態などの要因が複合的に影響しているケースも多々あるからです。
そのため原因のよくわからない頭痛や肩こりに悩まされている場合は、お口の中の問題を一つひとつ焦らずに解決していくことが大切です。吉祥寺のハート・イン歯科クリニックまでご相談いただければ、そのお手伝いができるかと思います。
まとめ
今回は、歯が浮くように痛い原因と治療法について解説しました。歯が浮くように痛い症状は、虫歯による歯痛とは大きく異なりますが、虫歯が根本的な原因となっているケースも少なくありません。具体的には、虫歯由来の歯根膜炎や根尖性歯周炎によって歯が浮くような感覚に悩まされることがあります。その他、歯周病や歯ぎしり・食いしばり、ストレスなども原因として考えられます。
いずれにしても歯科に相談することで適切な対処法が見つかりますので、まずはお気軽にご連絡ください。吉祥寺のハート・イン歯科クリニックでも、歯が浮くように痛い症状に悩まされている患者さんもよく来院されます。