2024.11.22

歯周病と糖尿病の深い関係 ~日本糖尿病協会登録歯科医が監修~

生活習慣の代名詞ともいえる糖尿病。厚生労働省の調査では、男性の約20%、女性の約10%に発症の疑いがあると考えられています。とくに50~60代の男性に増加傾向が見られる病気で、口腔の2大疾患のひとつである歯周病との深い関係も指摘されています。

そこで今回は、歯周病と糖尿病にどのような関係があるのかについて、吉祥寺のハート・イン歯科クリニックがわかりやすく解説をします。

歯周病と糖尿病の深い関係

歯周病は歯茎が赤く腫れる細菌感染症で、糖尿病は血糖値が上昇する代謝性疾患です。それだけを聞くと、歯周病と糖尿病には一切、関係がないように思えますが、実際はとても深い関連性が見られます。それも歯周病から糖尿病への一方向ではなく、糖尿病から歯周病への影響も認められることから、両者には「負の相互作用」があると考えられています。

体調の悪化

歯周病から糖尿病への作用

進行した歯周病では、歯と歯茎の境目に深い歯周ポケットが形成されます。その中に歯垢や歯石がたまり、歯周病菌が異常繁殖すると、その一部が歯茎の血管に侵入して血流に乗ります。血液というのは本来、無菌状態なので、歯周病菌やそれ由来の毒素が入り込むと免疫システムが作動して、炎症反応が起こります。その際、大量に産生されるのが「サイトカイン」と呼ばれる炎症性物質です。

サイトカイン自体は、悪い物質ではなく、細胞の分化や異物の排除に寄与するタンパク質なのですが、血中濃度が高まると血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の効果を減弱させてしまうのです。これは身体が歯周病菌によって攻撃を受けているような状態であり、ストレスも上昇しているため、血糖値を下げない、あるいは上げようとするメカニズムは何となく理解できるかと思います。

ただ、それが糖尿病という観点においては、極めて大きなマイナスになることも知っておく必要があります。歯周病によって高血糖状態が続けば、糖尿病の症状を増悪させたり、発症リスクを上昇させたりするのです。

糖尿病から歯周病への作用

続いては、全身疾患である糖尿病から口腔疾患である歯周病への作用についてです。糖尿病は、インスリンの分泌量が減少したり、その作用が減弱したりすることで発症する病気です。高血糖の状態が長く続くと、動脈が硬くなり、心筋梗塞や脳梗塞といった血管が詰まる病気を引き起こしやすくなります。

同時に、末梢の組織への栄養素・酸素・免疫細胞の供給が滞ることから、糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)、糖尿病腎症(とうにょうびょうじんしょう)、糖尿病神経障害という三大合併症のリスクが上昇します。糖尿病網膜症は失明の原因疾患として有名であり、糖尿病腎症は人工透析が必要となりやすい病気であることを強調しておきます。そうした糖尿病の合併症のひとつに、今回のテーマである歯周病が含まれているのです。

歯茎や歯根膜、歯槽骨などは、網膜や腎臓の毛細血管などと同じような末梢の組織であり、糖尿病による影響を受けやすくなっています。具体的には、糖尿病で歯茎への栄養素や酸素、免疫細胞の供給が滞ると、病原体への抵抗力が下がることから、歯周病菌の繁殖を促すことになります。そのため糖尿病を患っている方は、歯周病の発症リスクが高くなるだけでなく、重症化もしやすくなるのです。これが歯周病と糖尿病の負の相互作用の全貌です。

歯周病を治すと血糖値が下がります

このように、歯周病と糖尿病に深い関連性が認められるため、両者を併発している方も少なくありません。つまり今現在、歯周病の診断を受けている方は、糖尿病を合併している可能性が高く、逆もまた然りです。そうなると袋小路に入っている感覚に陥るかと思いますが、前向きに捉えれば、治療効果も相互作用が期待できます。

歯周病治療を受けて歯周病菌の数を減らすことができれば、血液中のサイトカイン濃度も低下し、血糖値を下げることにつながるのです。一方、糖尿病治療を受ければ末梢の血流が良くなり、歯茎にまで酸素や免疫細胞が滞りなく供給されることから、歯周病菌の活動も弱まっていくことでしょう。

このメカニズムを正しく理解するだけでも、歯周病治療や糖尿病治療へのモチベーションも高まるかと思います。その際、重要となるのが歯周病と糖尿病の理解が深い歯科医師に治療を任せることです。

血糖値の低下

糖尿病患者の方は近くの「日本糖尿病協会登録歯科医」を探しましょう

歯科医師の専門は、口腔やそれに近接する組織にとどまるため、代謝性疾患である糖尿病は専門外といっても間違いではありません。ただ、歯科医師の中には、糖尿病への理解も深い「日本糖尿病協会登録歯科医」がいます。これは日本糖尿病協会が認定する登録医の資格で、糖尿病と歯周病に関する正確な情報知識を有している証でもあります。

そんな「日本糖尿病協会登録歯科医」なら、糖尿病と歯周病を併発していたり、それらの合併症に悩まされたりしている方の歯科治療も正しく行うことができます。「日本糖尿病協会登録歯科医」の元であれば、歯周病や糖尿病の予防もしやすくなるかと思いますので、関心のある方はJADEC(公益社団法人日本糖尿病協会)のデータベースで、お近くに登録歯科医がいるかどうかを検索してみてください。ちなみに、吉祥寺のハート・イン歯科クリニックは、日本糖尿病協会登録歯科医です。

日本糖尿病協会登録歯科医

まとめ

今回は、歯周病と糖尿病の深い関係について、吉祥寺のハート・イン歯科クリニックが解説しました。歯周病と糖尿病には負の相互作用が認められることから、治療を受けずに放置していると、合併症リスクも顕著に高まります。当院のような日本糖尿病協会登録歯科医であれば、糖尿病の予防や症状の改善までを視野に入れた歯周病治療が可能となっておりますので、この2つの病気にお困りの方はいつでもお気軽にご相談ください。

糖尿病は、失明や末端組織の壊疽を引き起こし、歯周病はさまざまな全身疾患を誘発する怖い病気なので、可能な限り予防、早期発見・早期治療するのが望ましいといえます。

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