30代で歯周ポケットが4mmと言われた方へ
最近は、虫歯よりも歯周病への関心が高まっています。それは日本人の虫歯の数が着実に減少すると同時に、歯周病になる人が増えていることとも関係しています。また、歯周病は歯を失う原因の第1位であることに加え、深刻な全身疾患を誘発する点も忘れてはいけません。
そんな歯周病では、歯周ポケットの深さが進行度をはかる上でのポイントとなります。そこで今回は、30代で歯周ポケットが4mm以上と言われた方に向けて、その意味と必要となる治療法を吉祥寺のハート・イン歯科クリニックがわかりやすく解説をします。
歯周ポケットとは
歯科診療でよく耳にする「歯周ポケット」は歯と歯茎の境目に存在する溝です。正常な状態を「歯肉溝(しにくこう)」と呼び、1~2mm程度の深さが認められます。この溝が歯周病などによって深くなったものを歯周ポケットと呼んでいます。つまり、歯周ポケットと呼んでいる時点は、厳密には病的な状態を指しているのです。
とはいえ臨床現場では歯肉溝と歯周ポケットを区別して呼ぶことはまずないため、基本的には歯と歯茎の境目に存在している溝を歯周ポケットと考えて問題ありません。
【歯周ポケットの深さの目安】
- 1~2mm:正常
- 4mm以上:異常(歯周病)
歯周病でポケットが深くなる理由
歯周病にかかると、歯周ポケットが深くなっていきます。それは炎症反応によって、歯に付着した歯茎が剥がれていくからです。専門的には「付着歯肉(ふちゃくしにく)」と呼ばれるもので、この歯茎の量が減るほど、歯周ポケットも物理的に深くなっていきます。重症度の高い歯周病では、歯周ポケットが10mm以上になることも珍しくありません。
ちなみに、軽度の歯周病でも歯周ポケットが4mmになることがあります。これは歯周病で歯茎が腫れて、歯周ポケットが一時的に深くなったように見えるためです。専門的にはこれを「仮性ポケット」と呼び、適切な治療を受けることで元の状態へと戻せます。
4mm以上の歯周病で見られる症状
歯周病は、歯茎の腫れや出血、口臭が認められる病気で、歯周ポケットが深くなるとその症状が強くなります。なぜなら歯周ポケットというのは、酸素が嫌いな歯周病菌にとって住みやすい環境だからです。4mm以上の歯周ポケットが形成されれば歯周病菌の数も増えて、歯茎からの出血や口臭も強くなります。
30代で歯周ポケット4mmは異常?正常?
30代で歯周ポケットが4mmあると言われた場合は、残念ながら異常な状態といえます。上段でも解説した通り、健康な人でも1~2mm程度の歯周ポケット(厳密には歯肉溝)が存在するのですが、4mm以上の場合は歯周病と診断されます。それが前歯であっても奥歯であっても違いはありません。4mmの歯周ポケットがある時点で、付着歯肉の喪失が始まっているのです。
30代の歯周ポケットの平均は?
30代で歯周ポケットが4mmあると言われた方は、自分がこの年代のどの位置にいるのかも気になることでしょう。30代の歯周ポケットの平均が4mm以上であれば、極端に心配する必要もないからです。
ここで紹介しておきたいのが令和4年度の歯科疾患実態調査の結果です。歯科疾患実態調査は、厚生労働省が5年に1回行っている調査で、日本人の口内環境を知る上で極めて有用なデータが上がります。その中に「4mm以上の歯周ポケット持つ者の割合」という項目があり、25~34歳は「32.7%」、35~45歳は「34.7%」という数値が出ています。
つまり、30代付近では、3人に1人が4mm以上の歯周ポケットを持っていることがわかったのです。これは30代の歯周ポケットの平均値ではありませんが、ご自身の立ち位置を把握する上では有益なデータといえるでしょう。
4mmになった歯周ポケットの治療法
このように、30代で4mmの歯周ポケットが存在しているのは明らかに異常なことなので、治療で改善するのが望ましいです。具体的には、次のような方法で歯周病治療を行い、歯周ポケットを浅くしていきます。
【歯周基本治療】
クリーニング
歯の表面に付着した歯垢やバイオフィルムなどを一掃します。
スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
スケーラーと呼ばれる鋭利な器具で歯石を取り除く処置をスケーリングといいます。4mm以上の深い歯周ポケットが形成されているケースでは、ルートプレーニングという歯根面の歯石除去も必要となります。スケーラーを歯周ポケットの中にまで挿入して、歯石や汚染されたセメント質などを削り取っていきます。この処置には痛みと出決を伴うため、事前に局所麻酔を施します。
ブラッシング指導
クリーニングやSRPで歯周病期の温床となる汚れを一掃できたとしても、セルフケアが不十分だとまたすぐに同じ状態へと戻ってしまいます。そこで重要となるのがブラッシング指導です。口腔ケアの専門家である歯科衛生士が患者さん一人ひとりの口内環境に合ったブラッシング法を指導し、それを日々のセルフケアで実践していただきます。その結果、口腔衛生状態が良好に保たれるようになり、歯茎の腫れも改善していきます。4mmあった歯周ポケットも浅くなっていくことでしょう。
【歯周外科治療】
歯周基本治療では症状の改善が見込めなかったり、治療後も4mm以上の歯周ポケットが残ってしまったりする場合は、外科的な方法で治療することになります。歯周外科治療には、次のような種類があります。
- 歯周組織再生療法
- 切除療法
- 組織付着療法
- 歯周形成手術
それぞれ異なる特徴を持った治療法で、手順も大きく異なるのですが、30代で4mm以上の歯周ポケットが形成されたケースでも適切な効果が得られます。歯周外科治療についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽に当院までご相談ください。
まとめ
今回は、30代で歯周ポケットが4mmと言われた方に向けて、その意味と対処法を吉祥寺のハート・イン歯科クリニックが解説しました。30代で歯周ポケットが4mm以上に達している人は全体の30%程度を占めます。これは平均値とは言えませんが、30代で歯周ポケットが4mmある人はかなりの数になるといえます。同時に、30代で歯周病治療が必要な人もたくさんいることを意味します。
歯周病は自然に治ることがない病気なので、歯周ポケットが4mmあると言われた方は、できるだけ早く歯周病治療を受けるようにしましょう。歯周病を軽視して放置していると、歯周ポケットがさらに深くなるだけでなく、顎の骨の破壊が進んで歯そのものを失いかねません。