親知らず4本同時抜歯のメリット・デメリット

親知らずが歯周病や虫歯になると、個別の治療を施すのではなく、抜歯が適応されやすいです。これは親知らずの生え方に問題があり、時間をかけて歯周病治療や虫歯治療を行っても、すぐにまた再発するリスクが高いからです。そんな親知らずは最大で4本生えてきますが、すべてを同時に抜歯できれば、さまざまな負担を軽減できそうなものです。
また、親知らずをどうせ抜くなら、4本同時抜歯がいいと考えている方もいらっしゃることでしょう。今回はそんな親知らず抜歯4本の可否やメリット・デメリット、麻酔の方法などを吉祥寺駅3分のハート・イン歯科クリニックが解説します。
実は、親知らずが4本そろっている人は珍しい
はじめに、親知らずの基本事項を確認しておきましょう。親知らずとは、前から8番目に生えてくる、あるいは埋まっている永久歯で、専門的には第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)や智歯(ちし)と呼ばれています。今回のテーマである「親知らず抜歯4本」を前提にお話しすると、実は親知らずの本数には個人差があります。
そもそも親知らずが4本そろっている日本人は、3~4割程度と言われており6~7割は少なくとも1本以上の先天性欠如が認められるのです。その中には親知らずが1本も生えていない、あるいは埋まっていないケースも存在しています。その点を踏まえると「親知らず4本同時抜歯」というケース自体が極めて稀であると言えるでしょう。
ちなみに、親知らずは「完全埋伏」という形で、顎の骨に埋まっていることも珍しくないため、ご自身の親知らずの正確な本数を知りたい場合は、歯科医院でパノラマレントゲン撮影を受ける必要があります。
親知らず4本同時抜歯は可能なこともある
結論から言うと、親知らずを4本同時に抜歯することはほとんどありません。なぜなら親知らず抜歯4本を行うと、患者さんの心身にかかる負担があまりにも大きくなってしまうからです。もしも身の回りに親知らずの抜歯を経験された方がいらっしゃれば、その時の感想を聞いてみましょう。おそらく、親知らずの抜歯は1本、多くても2本ずつ行い、その都度、術後の腫れや痛みに悩まされたことかと思います。それを4本同時に行うことは、多くの患者さんで許容範囲を超えてしまいます。
ただし、患者さんの親知らずの生え方や全身の健康状態が良好で、全身麻酔等の高度な医療にも対応できる施設であれば、親知らず抜歯4本を行うことも可能と言えます。特別な理由がある方にとっては、親知らず4本を同時に抜歯する方がメリットも大きくなる場合もあるため、選択肢のひとつとして検討することは何ら問題ありません。
親知らずを4本まとめて抜くメリット・デメリット
続いては、親知らず4本同時に抜歯した場合のメリットとデメリットを解説します。
メリット1:通院回数の減少・治療期間の短縮
一般的には、親知らずを1本抜いてから1週間程度で抜糸を行い、傷口が癒えるのを待ってから、次の1本の抜歯へと取り掛かります。これを4本の親知らずで実施した場合は、少なくとも8回の通院が必要となり、治療期間も2ヵ月以上かかります。その間は食事や会話などに支障をきたす場面も多くなることから、親知らず4本同時抜歯を希望される方も少なくありません。実際、親知らずを4本同時抜歯することによって、通院回数が極端に少なくなり、治療期間も短くなります。
メリット2:痛みや恐怖心を感じない手術が可能
親知らず抜歯4本の手術は、通常の局所麻酔のみで行うことはまずありません。半分眠ったような状態となる静脈内鎮静法を併用したり、全身麻酔下で行ったりするのが一般的です。これらの麻酔法では、痛みや恐怖心を取り除くことができるため、標準的な親知らずの抜歯処置より不快な思いをすることが少ないです。
メリット3:親知らずの問題を一度に解決できる
親知らずが4本生えている、あるいは埋まっている方は、この問題をどう解決していくか悩まれているかと思います。上述したように、通常では親知らずを1本ずつ抜いていくため、最短でも2ヵ月程度は辛い思いをしなければなりません。こうした親知らずの問題を一度に解決できることは、患者さんにとって大きなメリットとなります。
メリット4:小顔効果が見られることがある?
親知らずを4本抜歯しても、基本的に小顔効果が見られることはありません。ただ、ケースによっては親知らずを4本抜くことで口腔周囲筋の緊張が緩和され、エラの張りが気にならなくなる場合があります。その結果、小顔になったような印象へと変化することもあるでしょう。
デメリット1:抜歯後の痛みや腫れが強く現れる
親知らず4本を同時に抜歯すると、口腔内の4ヵ所で痛みや腫れが生じます。どのくらいの症状が現れるかは個人によって大きく変わりますが、親知らずを1本ずつ抜いた場合の4倍、痛みや腫れが出てもおかしくはありません。
デメリット2:会話や食事、呼吸に支障をきたす
親知らずを抜いた4ヵ所が大きく腫れると、しゃべる・噛む・飲み込む・呼吸する機能に支障をきたします。そのため親知らずの4本抜歯から少なくとも1週間は普段通りの生活を送ることは難しいです。また、全身麻酔下で親知らず4本同時抜歯を行った場合は、日帰りではなく入院が必要となる点も注意しなければなりません。局所麻酔と静脈内鎮静法を併用した場合は、日帰りも可能となりますが、腫れや痛み、全身状態をきちんと見極める必要があります。
デメリット3:偶発症のリスクが高まる
親知らずの抜歯には、神経の損傷、術中・術後感染、上顎洞の穿孔、口腔底歯牙迷入ドライソケットなどの偶発症リスクを伴います。親知らず4本同時抜歯を行えば、そのリスクは大きく上昇します。
デメリット4:費用が高額となる
親知らずの抜歯には、保険適用されるケースが多いですが、4本同時抜歯で静脈内鎮静法や全身麻酔を適応する場合は、自費診療になる可能性も高いです。入院費用も合わせると、数万円から十数万円の出費となります。
親知らず4本同時抜歯は全身麻酔 or 局所麻酔どっちがいい?
親知らずの抜歯を4本同時に行う場合は、局所麻酔のみで対応するのは難しいです。上述したように、静脈内鎮静法を併用するのが一般的で、複雑な処置を要するケースや患者さんの健康状態に注意すべき点があるケースでは全身麻酔が推奨されます。いずれにしても患者さんの希望だけで決められることではないため、親知らず抜歯4本の麻酔法に関しては、口腔外科医と綿密に相談する必要があります。
まとめ
今回は、親知らずを4本同時に抜歯する可否やメリット・デメリット、推奨される麻酔法などを吉祥寺駅3分のハート・イン歯科クリニックが解説しました。通常、親知らずは1~2本ずつ抜いていくものであり、4本同時抜歯は極めて稀です。親知らず抜歯4本には、相応のリスクを伴うことから、特別な理由がない限り、通常の方法を選択するのが望ましいです。特別な理由で親知らず4本同時抜歯を行う必要がある場合は、大学病院などの大きな医療機関の口腔外科で対応してもらうことになります。