歯医者のエアタービンは毎回交換している?患者ごとの交換・滅菌率52%から考える歯科医院選び
歯科治療で「キーン」という音を立てながら歯を削る器具の一つがエアタービンです。口の中で直接使用するため、「患者ごとに交換しているのか」「きちんと滅菌されているのか」と気になる患者様もいらっしゃるでしょう。今回は、エアタービンの役割と感染対策、過去に報告された滅菌率52%という数字の見方、歯科医院選びのポイントを解説します。
歯科治療で「キーン」という音を立てながら歯を削る器具の一つがエアタービンです。口の中で直接使用するため、「患者ごとに交換しているのか」「きちんと滅菌されているのか」と気になる患者様もいらっしゃるでしょう。今回は、エアタービンの役割と感染対策、過去に報告された滅菌率52%という数字の見方、歯科医院選びのポイントを解説します。
歯医者で使うエアタービンとは?どんな治療に使われる器具?

エアタービンは高速で歯を削るための器具
エアタービンは、圧縮した空気の力で先端の小さな回転部分を高速回転させ、そこに装着したバーと呼ばれる切削器具で歯を削る装置です。歯科では「ハンドピース」と呼ばれる器具の一種で、主に虫歯を取り除く処置や、被せ物を装着するために歯の形を整える処置などで使われます。
歯は非常に硬いため、効率よく削るには高い回転数が必要です。エアタービンは短時間で切削できる反面、摩擦による熱が発生しやすいため、通常は水を噴射しながら使用します。この水は歯の温度上昇を抑えるだけでなく、削りかすを洗い流す役割もあります。
また、歯科で使用する回転切削器具には、エアタービンのほかに電気モーターで回転するコントラアングルなどがあります。見た目が似ていても構造や用途は異なりますが、患者様の口腔内で使用した器具については、それぞれの材質やメーカーの指示に合った再処理が必要です。エアタービンだけを特別に管理すればよいわけではなく、診療に使う器具全体を適切に扱うことが感染対策の基本になります。
口の中で直接使用するからこそ衛生管理が重要
エアタービンの先端は、治療中に唾液や血液、削った歯の細かな粉などに触れる可能性があります。また、治療中の回転停止時などに、器具内部へ口腔内の液体や微細な汚れが入り込む可能性も指摘されています。そのため、表面をアルコールなどで拭くだけでは十分な感染対策とはいえません。
歯科医院では、エアタービン本体だけでなく、先端に装着するバーなども、用途や材質、メーカーの指示に応じて適切な洗浄・滅菌などの再処理が必要です。患者様から見えにくい部分ですが、こうした器具の取り扱いは安全な歯科診療を支える重要な工程です。
エアタービンは患者ごとに交換・滅菌する必要がある?

基本は患者様ごとに交換する
歯科用ハンドピースは、患者様ごとに交換し、使用後は適切に洗浄したうえで高圧蒸気滅菌器などを用いて滅菌することが推奨されています。厚生労働省も、一般歯科診療における院内感染対策として、使用したハンドピースを患者ごとに交換し、オートクレーブで滅菌することを徹底するよう求めています。
ここでいう「交換」とは、使い捨てにするという意味ではありません。使用済みのエアタービンをいったん診療から外し、洗浄・注油など必要な工程を経て滅菌し、次回安全に使用できる状態にすることです。そのため、診療を滞りなく行うには複数本のハンドピースを用意しておく必要があります。
なぜ表面の清拭だけでは不十分なのか
エアタービンは複雑な内部構造を持っています。外側を消毒薬で拭いてきれいに見えても、内部まで十分に処理できるわけではありません。器具を介した交差感染を防ぐためには、メーカーが定める方法に従って洗浄・メンテナンスを行い、その後に適切な滅菌工程へ進めることが重要です。
滅菌前には、器具に付着した血液や汚れを取り除く洗浄工程が欠かせません。汚れが残ったままでは、その後の処理の妨げになるためです。さらに、ハンドピースでは機種に応じて注油などのメンテナンスを行い、滅菌後は再び汚染されないよう清潔な状態で保管します。つまり、オートクレーブに入れることだけが衛生管理ではなく、「回収・洗浄・メンテナンス・滅菌・保管」という一連の流れが重要です。
なお、オートクレーブとは、高温・高圧の蒸気を利用して微生物を死滅させる滅菌装置です。歯科ではエアタービン以外にも、耐熱性のあるさまざまな器具の滅菌に使用されます。
患者ごとの交換・滅菌率52%という調査結果をどう見る?

52%は2017年に公表された過去の調査結果
「エアタービンの滅菌率52%」という数字は、現在の全国の歯科医院の状況をそのまま示す最新データではありません。厚生労働省が2017年に周知した通知では、同年5月に公表された厚生労働科学研究の調査で、使用済みハンドピースを患者ごとに交換、滅菌していると回答した歯科医療機関が52%だったことが紹介されています。
同じ調査では、「感染症患者と分かった場合に交換・滅菌」が17%、「状況に応じて交換・滅菌」が16%、「消毒薬で清拭」が14%とされていました。この結果を受け、厚生労働省は院内感染対策のさらなる徹底を求めています。
数字だけで現在の歯科医院を判断しないことが大切
52%という数字を見ると、不安を感じる患者様もいるかもしれません。しかし、これは2017年に公表された調査結果です。現在受診している歯科医院がどのような衛生管理を行っているかを、この数字だけで判断することはできません。
一方で、この調査が歯科医療における器具の滅菌管理を見直す契機の一つになったことは重要です。感染症の有無が分かっている患者様だけ対策するのではなく、すべての患者様の血液や体液には感染性がある可能性を前提として、同じ基準で感染対策を行う考え方が基本となります。
また、滅菌器そのものも、適切に作動していることを確認しながら使用する必要があります。器具を詰め込みすぎない、対応している器具だけを処理するなど、日々の運用も重要です。こうした基本を継続して守ることが、患者様ごとの安全な診療につながります。
エアタービンの衛生管理から考える歯科医院選びのポイント
衛生管理について質問できる歯科医院か
歯科医院を選ぶ際は、治療内容や通いやすさだけでなく、感染対策への姿勢にも目を向けてみてください。たとえば「ハンドピースは患者ごとに交換していますか」「どのように滅菌していますか」と尋ねた際に、わかりやすく説明してもらえるかは一つの参考になります。
ただし、待合室から滅菌器が見えるかどうかだけで衛生管理の良し悪しを判断することはできません。重要なのは、使用済み器具と清潔な器具を適切に分け、洗浄から滅菌、保管までの流れが院内で整備されていることです。
使い捨て用品の活用や手指衛生も確認ポイント
歯科の感染対策はエアタービンだけで完結するものではありません。注射針や紙コップ、手袋など、使い捨てに適したものを適切に交換していること、診療前後に手指衛生を行っていること、診療台や触れる部分を清拭していることなど、複数の対策を組み合わせる必要があります。
虫歯治療、歯茎の処置、噛み合わせの調整、子どもの診療など、歯科ではさまざまな場面で器具を口腔内に使用します。感染対策は特定の治療だけに必要なものではなく、日常診療全体の基本です。
ホームページの情報も参考にする
歯科医院によっては、ホームページで滅菌器や器具の管理方法、使い捨て用品の使用について紹介しているため、受診前に確認しておくのもよいでしょう。ただし、「最新の滅菌設備がある」といった設備の名称だけではなく、患者様ごとに器具を交換し、適切な手順で運用しているかが重要です。
不安な点があれば遠慮なく質問してください。感染対策について説明を受け、納得したうえで治療を受けられる環境は、長く通う歯科医院を選ぶ際の大切な条件の一つです。
まとめ
エアタービンは虫歯治療などで使用する重要な歯科器具で、患者様ごとの交換と適切な滅菌が感染対策の基本です。「52%」は2017年に公表された過去の調査結果であり、現在のすべての歯科医院に当てはまる数字ではありません。歯科医院を選ぶ際は数字だけで不安になるのではなく、器具の交換・滅菌や院内感染対策について丁寧に説明しているかを確認しましょう。